二重通貨制を逆手に取って楽しむコツ

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アイスクリーム屋さんコッペリアに並ぶ現地の人の列

アイスクリーム屋さんコッペリアに並ぶ現地の人の列

キューバの物価は高いのか? その答えは「イエス」でもあり「ノー」でもあります。なぜなら、二重通貨制度を敷いている国だから。  

外国人のためのペソはCUC(セーウーセー)とよばれ、その価値はほぼ米ドルと同じです。現在の為替レートで、米ドル換算すると約120円ぐらい。このCUCは外貨との両替が可能です。これに対して、一般市民のためのペソはCUP(カップ)という単位。1CUCを得るには、25CUP支払わなければいけません。ですから、外国人用のペソは現地のペソの25倍の価値、というわけです。  

外国人が利用するホテル、レストラン、タクシーは原則外国人通貨(CUC)で支払います。だから、値段も相応に設定されており、キューバにいると、日本やアメリカを旅行するのと同じ感覚で現金がとんでいきます。ところが、街中の両替所で外国人ペソを現地ペソに代えることもでき、これでやりくりする裏ワザもあるのです。  

ペソの壁を破るには

二重通貨制で観光客が戸惑うのは「観光客プライスが東京やニューヨーク並み」ということだけではありません。現地の人と同じものを食べたい、現地で人気のスポットに行ってみたいといった希望をかなえるのが難しくなること。二重通貨制があるがゆえに、外国人と現地の人が集まる場所がわかれているし、地元の人が使うバスや乗り合いタクシーに観光客は乗れないからです。  

この2つの「ペソの壁」を破って観光するのは一筋縄でいきません。スペイン語ができる、あるいはキューバの事情に明るい上級者でなければ、頼りになるのは現地で培う「コネクション」。観光客が現地のペソを使うのは推奨されていませんが、罰せられることはありません。私は現地で知り合った日本人や、英語や日本語がわかるキューバ人に力を借りました。  

クラシックカーの乗合いタクシーについては、以前の記事にも書きましたが、料金体系やルートについては複雑そう。交通手段として乗りこなすにはスペイン語に自信がないと難しいですが、現地の人と「一緒に乗る」のもひとつの手。ただあまりの乗り心地に、「外から眺めていたほうがいい」と思ってしまうかも。    

現地ペソでむしろ豪華な体験

2008年に地元のバスに乗ったのは忘れられない思い出です。運転手さんがサルサを大音量で流し、音楽に合わせて好き勝手にクラクションを鳴らしている。女性や年配者が乗ってくると男性は席を立って譲り、座っている人は立っている人のかばんを持ってあげる。そのタイミングで知らない同士で会話が始まる。「日本の電車がこんな楽しかったら、人身事故がなくなるかもしれない」などと思ってしまいました。  

現地の人が行くレストランを探し続けてわかったことは、「キューバの人たちが外食するようになったのはつい最近だ」ということです。かつてレストランは外国人のためのもので、地元の人は家庭でご飯を食べていた。どうりで血眼になって探しても、現地の人が集う場所がなかなか見つけられなかったわけです。

ところが、ここ2年ほどで自営業規制が緩和され、現地ペソで支払う24時間営業の飲食店も増えました。ピザやサンドイッチ、チキンとご飯など定食屋感覚のレストランもあり、現地ペソさえあれば、「キューバの人たちと同じものが食べたい」という希望はたやすくかないそうです。  

現地ペソと外国人ペソの「逆転現象」もあります。新市街にある、地元で人気のアイスクリーム店「コッペリア」。映画「苺とチョコレート」にも出てくる観光名所でもあります。現地の人と観光客の食べる場所がわかれていて、現地の人は長い列を作っています。

暑いなか待つのは大変そうですが、いったん中に入ればなんと、こちらのほうが観光客スペースより豪華。アイスクリームは4玉盛りと量も2倍、種類も多く、テラス席もあれば、室内空間の内装もすてきです。現地ペソが外国人ペソを上回っているぞ!  

外国人通貨を使って現地の人が部屋を貸し出す「民宿」に泊まるなど、外国人通貨を使ったディープな体験もありますが、こちらはまた別の機会に。二重通貨制度を逆利用して、勘やら、裏ワザやら、経験やらコネクションを駆使しディープなキューバを知るのもまた、面白いかもしれません。  

(追記)2013年に二重貨幣制を解消する旨、キューバ政府が機関紙「グランマ」を通じて発表しましたが、いつになることやら。現時点ではそのままです。  

Author Profile

斉藤 真紀子
斉藤 真紀子
キューバ倶楽部編集長、ライター。ニューヨークでサルサのレッスンを受けたのをきっかけに、2000年に初めて訪れたキューバが心のふるさとに。
旅をするたびもっと知りたくなるキューバを訪れ、AERA、東洋経済オンライン、TRANSIT、ラティーナ、カモメの本棚、独立メディア塾ほか多数の媒体で記事を執筆。
2015年にキューバの現地の様子や魅力を伝える「キューバ倶楽部」をスタート、旅の情報交換や勉強会、講演会などのイベントも運営。
★キューバのエッセンスを生活に取り入れる日々をnote(https://note.com/makizoo)に綴る。
★Twitter: @cubaclub98 ★ Instagram: @cubaclub98
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