
キューバの国営メディア、Cubadebateより
キューバ(人口約1100万人)の新型コロナウィルス感染状況は、現地時間の5月8日現在、感染者数が1754人、死亡者が74人となっています。
最初の感染者が判明したのは、3月11日。4月は新規感染者数が40~60人超の日も多かったのですが、5月5~7日は20人以下と、約50日ぶりの低水準となりました。
一方、日本(人口約1億2600万人)は5月9日現在(NHK調べ)、感染者数が1万5777人、死亡者は624人(ともにクルーズ船を除く)。検査方法の違いもあり、単純に比較はできませんが、人口当たりの感染者数や、5月に入って落ち着いている感染状況の推移なども似ている印象です。
ただし、キューバと日本で異なる点のひとつは情報の伝え方です。
感染者の情報をどこまで伝えるか
キューバの新型コロナウィルス対応で特徴的なのは、細やかな情報発信です。「待つより探す、キューバの新型コロナ対策」という記事でも説明していますが、毎日、テレビ番組やインターネットで、政府や専門家が感染状況や政府の対応について情報発信をしています。
なかでも、キューバ保健省(日本の厚生労働省)のウェブサイトは、驚くほどの情報量です。俯瞰した感染状況に加えて、感染者の年齢、住んでいる州や地域、海外渡航歴、接触者(自宅待機)をしっかり追跡しているほか、重症者についての情報が詳しく厚い。持病や病歴、症状、必要な処置、経過等々、医学用語が並びます。
感染者の職業などはもちろん公開しておらず、個人が特定される情報でないにしても、日本の感覚からすると「プライバシーの問題にはならないのかな」などと心配してしまうほどです。
とはいえ、ふだんからキューバでは地域の家庭医が、担当する住民全員の健康状態の把握に努めているという背景もあります。健康情報は医師と共有してケアするためのもので、「プライバシーの問題」ではないのです。
新型コロナウィルス対策では、家庭医に加え、医大生が個別訪問をしていますが、情報を集めるにも相当な人手や労力を要するのではないかと思います。
医療に力を入れているキューバでは、「一般の人たちと話をしていても、健康マニアや医療に詳しい人が多くて専門用語が会話によく出てくる」と、トラベル・ボデギータ代表の清野史郎さんも話していました。新型コロナウィルス対応で、詳細な内容を発信する背景は、市民の関心も大きいのでしょうか。
コメント欄に首相宛のメッセージ
キューバは国営メディアがニュースや情報を発信しており、新型コロナ関連の報道もグランマ(Granma)やクバデバテ(Cubadebate)などで詳細を報じています。コメント欄で「首相宛」の長文メッセージも見かけました。リーダーの取り組みをねぎらいつつ、「生活が大変」などと訴えるリアルな声。こうした「市民側の発信」に政府はどう応えているのか。こちらも興味がわきました。
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- 日本経済新聞米州総局(ニューヨーク)金融記者、朝日新聞出版「AERA English」編集、週刊誌「AERA」専属記者を経てフリー。共著に「お客様はぬいぐるみ」(飛鳥新社)。趣味はラテン音楽&ダンス、カポエイラ(格闘技)
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