労働者の街、社会運動も盛んな大阪、西成のあいりん地区。ここにキューバ革命の指導者、チェ・ゲバラの旗がひときわ目立つ、居酒屋「グランマ号」があります。「グランマ号」はチェ・ゲバラやフィデル・カストロが革命をめざしてキューバに上陸したときの船の名前です。マスターの新井信芳さんに、チェ・ゲバラや「グランマ号」への想いについて聞きました。
店内にあふれるゲバラグッズ
店を入ると、壁にはチェ・ゲバラのポスター、写真、グッズなど、ゲバラファンにはたまらない「お宝」で埋め尽くされています。
「私はキューバに行ったことはありませんが、みなさんが店に持ってきてくれるんですよ」
穏やかな口調で話す、マスターの新井信芳さん。
著書『釜ヶ崎に、グランマ号上陸す~チェ・ゲバラの最も出来の悪い弟子になるまで』(東方出版)で明かされる、波乱万丈のストーリーから想像していた印象とずいぶん異なります。
元泥棒と社会活動家の肩書き
朝日新聞の紹介記事にも見出しに「元横領犯」、新井さんの言葉に「元々はただの泥棒」といった文字が目立ちますが、現在はグランマ号マスターのかたわら、社会をよくするための運動にいそしんでいます。
パレスチナ支援のデモや、袴田死刑囚の冤罪を訴える運動に参加したり。年末年始など「越冬闘争」で西成地区で生活困窮者への炊き出しなどの支援をしたり。
「いま真面目なことをしているので、元泥棒と書いてくれるほうがバランスが取れていいでしょ」
新井さんはそう言って笑います。
私(斉藤)は3回グランマ号を訪ねていますが、地元の人や観光客のほか、キューバ音楽を演奏する人、社会活動に興味がある人、沖縄や台湾の文化を継承するグループなど、個性あふれるお客さんたちに出会い、楽しい時間を過ごしました。
「グランマ号」には、ゲバラとともに闘った日系ボリビア人の医師、フレディ前村を描いた映画『エルネスト』を監督した阪本順治さんも訪れ、店に貴重な写真と手紙を寄贈されています(写真↓)。
不良少年がゲバラから受けた衝撃
新井さんがチェ・ゲバラの伝記を読んだのは高校生のとき。やりたいこともわからなかった「中途半端な不良学生」で停学期間中だったといいます。
ゲバラの生きざま、死にざまに衝撃を受け、大学で福祉を学び、障がい者施設で働きましたが、その後の曲折を経て(詳しくは著書で!)ここ、釜ヶ崎(現在の西成あいりん地区)にたどり着きました。
「仲間との出会いは、ゲバラが引き合わせてくれた」と感じ、新井さんは新しい道を進むことになりました。
フィデル・カストロはじめ82人の仲間とチェ・ゲバラが決起して、キューバ本土に上陸した「ぼろ船」の名前、「グランマ号」を店名にしたのは、人生を導いてくれたチェ・ゲバラへの感謝があると新井さんは説明します。
社会活動はゆるくてもいい
「キューバで重要な社会的役職に就いても、地位を捨ててまで、世界の革命という理想を追求して旅に出た」ゲバラに感銘を受けた新井さん。
とはいえ、社会のあるべき姿を追求しても、なかなかすぐに現実が変わらないこともあります。
それでも社会活動を続ける「秘訣」を聞きました。
「社会を変えようと気負わなくても、ゆるくてもいい。メッセージを掲げ、声をあげるだけでいいんです」と語る新井さん。
自分らしく、仲間とともに、何ができるのか。新井さんが未来を見据えるまなざしに、力がともっていました。
★グランマ号
大阪府大阪市西成区萩之茶屋2-7-5
定休日、新井さんがお店にいるタイミングなど問い合わせ
090-6735-6096(新井さん携帯)
店舗情報(食べログ)
★キューバ倶楽部イベント中止のお知らせ
2024年7月27日(土)「グランマ号」にて予定しておりましたイベントは都合により中止となりました。
Author Profile
- キューバ倶楽部編集長、ライター。ニューヨークでサルサのレッスンを受けたのをきっかけに、2000年に初めて訪れたキューバが心のふるさとに。
旅をするたびもっと知りたくなるキューバを訪れ、AERA、東洋経済オンライン、TRANSIT、ラティーナ、カモメの本棚、独立メディア塾ほか多数の媒体で記事を執筆。
2015年にキューバの現地の様子や魅力を伝える「キューバ倶楽部」をスタート、旅の情報交換や勉強会、講演会などのイベントも運営。
★キューバのエッセンスを生活に取り入れる日々をnote(https://note.com/makizoo)に綴る。
★Twitter: @cubaclub98 ★ Instagram: @cubaclub98
歴史がわかりました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ありがとうございます!!