ハバナ市内の学校の前で（撮影：斉藤真紀子）
「おめでとう」と言われればうれしいけれど、同時に、複雑な心持ちになります。3月8日の「国際女性デー」。国連が「女性の政治的自由や平等」を掲げて、定めた日。つまり、世界でいまだ、性差別がなくならないことの裏返しでもあります。
こうしたなか、キューバでの、女性の社会進出が注目されています。国会議員に占める女性の数は53パーセントで、世界第2位という高い水準。世界平均では25パーセント、日本は9パーセントにすぎず、166位でした（2020年時点）。
「女性がたくさんいる理事会は時間がかかる」と口をすべらせ、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森前会長が世界の注目を浴びましたが、もし、日本でも国会議員の過半数が女性だったら、同じ発言をできたのだろうかと考えてしまいます。
革命前は専業主婦が多かった
キューバでは、国会議員のほかにも、教育、医療、司法の分野で女性が6～7割を占め、活躍が目立ちます。
◇各分野で女性が占める割合◇（2019年度、キューバ政府）
▶国有企業 49%（うち80%が中～上級職）
▶国家や政府のリーダー職 50%
▶大臣 24% 副大臣 48%
▶地方自治体のリーダー職 40%
▶裁判官、検察官など司法関連 70%
▶教育関連 67%
▶医療関連 69%
▶科学、技術、イノベーション関連 53%
「女性に国がのっとられるぞ」、「男性の社会進出について話そうではないか」と、男性たちがジョークを飛ばすほど、女性の社会進出が定着しているキューバ。しかし、革命（1959年）前は、女性は専業主婦が多かったそうです。
駐日キューバ大使館の文化担当、パトリシア・フレチジャさんは2018年、キューバ倶楽部のトークイベントで、女性の社会進出がここまで来た過程について、説明してくれました。
「スペインの植民地だった流れから、もとは父権が強い『マッチョ』な社会だった」
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「女性は主婦、あるいはタイピストや秘書など、限られた役割だった」
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「転機となったキューバ革命には、女性指導者たちもいて、革命後、女性の社会進出に尽力した」
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「革命前は読み書きができなかった市民も多かったが、革命後の識字運動、教育の普及により、男女ともに機会が広がった」
440万人が参加する女性連盟
革命後の政府は初期のころ、優秀な女性が優先的に役職に就けるようにするなど、格差是正の後押しをしていました。が、現在ではこうした「逆差別」的な制度はもう、一部しか残っていないそうです。
さらに大きな役割を占めてきたのが、「キューバ女性連盟（FMC)」という組織。女性の革命指導者で、ラウル・カストロ元国家評議会議長夫人でもあったヴィルマ・エスピンさんが創始者で、現在も440万人の14歳以上の女性がメンバーになっています。（キューバの人口は約1100万人）。
FMCは「キューバにおける女性の立場をチェックする」（フレチジャさん）ほか、たとえば男性上司が女性の部下に性差別的な発言をしたら、労働組合とFMCが注意をする、というふうにお目付け役も果たしているのです。
男性に家事や子育ての啓蒙活動
また保育園がほぼ無料であること、男性に向け家事や子育てをするための啓蒙教育をおこなってきたことなど、政府による、仕事と家庭を両立できる環境づくりも、背景にあるとのことでした。
「日本より仕事環境がゆったりしていて、仕事とプライベートの区分も日本ほどきっちりしておらず、子どもの世話をしなければいけないときなどに上司に相談がしやすい」（フレチジャさん）という説明もありました。
女性の社会進出が定着した今でも、各家庭で家事や子育ての協力には課題があるようです。また、女性のプロフェッショナルが増える一方で少子化が進んでいるとのことでした。
日本とキューバ、社会のシステムは大きく違いますが、女性みずから社会進出のうねりを起こしていく、こうした動きを取り入れていく余地はまだ、日本にありそうだなと思いました。
Author Profile
- キューバ倶楽部編集長、ライター。ニューヨークでサルサのレッスンを受けたのをきっかけに、2000年に初めて訪れたキューバが心のふるさとに。
旅をするたびもっと知りたくなるキューバを訪れ、AERA、東洋経済オンライン、TRANSIT、ラティーナ、カモメの本棚、独立メディア塾ほか多数の媒体で記事を執筆。
2015年にキューバの現地の様子や魅力を伝える「キューバ倶楽部」をスタート、旅の情報交換や勉強会、講演会などのイベントも運営。
★キューバのエッセンスを生活に取り入れる日々をnote（https://note.com/makizoo）に綴る。
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