【インタビュー】親交をあたため、キューバ人の家を訪ねた、写真展「En su Casa otra vez」

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写真家の樋口トモユキさん。2022~23年に滞在したキューバでの撮影を通じて「自信がつきました」と語る

 人なつっこい、キューバの人たち。道すがらの観光客に笑顔を向ける人もいます。

 しかし、写真家の樋口トモユキさんが撮りたかったのは、キューバの人たちが「心から打ち解けているときの表情」でした。

 「6カ月間ハバナに滞在して、スペイン語を学び、だいぶコミュニケーションに慣れてきたころ、最後の1~2か月に撮影しました。親交があった人たちに交渉し、家を訪ねて、家族とともに写真を撮る。『笑って』と言わずに、話をしながら、リラックスした表情を引き出しました」

 樋口さんはこのように話していました。

 ひとつひとつの作品に映し出された家、そして人びとの表情には、キューバらしさがあふれています。

 たとえば、行きつけのバーでよく会った50歳の男性は、母親に寄り添いながらうれしそうな表情ですが、「キューバはマザコンが多い。撮影のときも、母親への愛情を包み隠さず言葉にしていました」と樋口さん。

 民泊でお世話になった大家さんの里帰りにも同行し、家族を撮影しました。大家さんの母親は一張羅に身を包み、最初は緊張ぎみでしたが、2人の娘や樋口さんと話すうち、次第に表情をほころばせたそうです。

 大家さんの母親の写真を見ると、背景に若い男性の写真が写り込んでいます。キューバ革命(1959年)で戦い、若くして命を落とした旦那さんだそうです。母親の凛としたたたずまいは、大変なときもしっかり前を向いて歩んできた人生を物語っているようです。

 アフロキューバ信仰「サンテリア」の儀式をとりおこなう司祭の家には、儀式に使う道具が壁にずらり。三猿のような置き物、陶器や木製のアンティークな入れ物など、さながらインテリアのようでした。

 

民泊の大家さん(右から1番目と2番目、左から1番目に映っている)と大家さんの母親(左から2番目)

 私(キューバ倶楽部、斉藤)は2023年、ハバナに滞在していた樋口さんと現地でお会いすることができました。効率性を追いかけない、ゆったりした時間の流れのなかで、「キューバにいると、生きている感覚がよりリアルなのはなぜだろう」と語り合ったのを思い出します。

 樋口さんは滞在期間に街や人の表情を数多く撮りためて、これまで2回の写真展で披露していますが、"otra vez"(もう一度)と題された3度目の写真展は、もっとも時間をかけて、いわば「非効率」を尽くした対話の積み重ねによって築いた、人との関係性がテーマになっています。

 私が写真展に出かけたのは平日の夜でしたが、樋口さんや会場のバーで偶然出会った人たちと、写真を通してさまざまな対話ができたのが、かけがえのないひとときでした。

 

樋口トモユキのキューバ写真展「En Su Casa otra vez」
2024年1月15日~28日

ギャラリー カフェ&バー ルーデンス(Ludens)
17:00~24:00

東京都世田谷区北沢2-21-26 下北ドリームズビル 2F
(東京・下北沢 南西口徒歩1分)
TEL: 080-3696-4236
樋口さんInstagram : tomoyuquito
Ludens Instagram : ludens_1203

Author Profile

斉藤 真紀子
斉藤 真紀子
キューバ倶楽部編集長、ライター。ニューヨークでサルサのレッスンを受けたのをきっかけに、2000年に初めて訪れたキューバが心のふるさとに。
旅をするたびもっと知りたくなるキューバを訪れ、AERA、東洋経済オンライン、TRANSIT、ラティーナ、カモメの本棚、独立メディア塾ほか多数の媒体で記事を執筆。
2015年にキューバの現地の様子や魅力を伝える「キューバ倶楽部」をスタート、旅の情報交換や勉強会、講演会などのイベントも運営。
★キューバのエッセンスを生活に取り入れる日々をnote(https://note.com/makizoo)に綴る。
★Twitter: @cubaclub98 ★ Instagram: @cubaclub98
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