米国が「テロ支援国家」に再指定~分断の渦に巻き込まれるキューバ

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ハバナの市街で
(撮影:斉藤真紀子)

米国がキューバを「テロ支援国家」に再び指定しました。自国も混乱するさなか、なぜこのタイミングなのか。

キューバと2015年に国交回復をしたオバマ前大統領のとき、副大統領を務めたのがバイデン次期大統領でした。ゆえに就任後、キューバへの融和政策をとることが予想されます。そんなバイデン氏をけん制するねらいがある、という見方が大勢のようです。

言葉は悪いですが、まるでトランプ政権の「最後っ屁」のような。分断と選挙後のごたごたが露わになった米政治の都合で、インパクトの強い「ラベル貼り」をキューバにするあたり、レガシー(遺産)ならぬ後味の悪さが残ります。

4年に渡り、さんざん苦しめた

米国は1982~2015年にも、キューバを「テロ支援国家」に指定していたので、このたび復活してしまったことになります。現在、イラン、北朝鮮、シリアがこのリストに入っています。

ポンぺオ国務長官は、背景としてキューバが、米国と敵対関係にあるベネズエラを支援したり、コロンビアの左翼ゲリラ幹部の引き渡しに応じなかったり、米国からの亡命者を受け入れたりしたことを批判しています。米国にとって不都合なのでしょうが、「テロ支援」の裏付けがあるとは言いがたい内容です。

「テロ支援国家」に指定された国には、武器の輸出や販売ができない、人道支援以外の経済援助が禁止されるといった扱いになります。トランプ政権はこの4年間で経済封鎖、経済制裁によりキューバへの圧力を強めており、さんざんキューバに住む人たちを苦しめてきました。それに比べれば、今回の影響は限定的とみられています。

キューバ系移民の側近

4年前、トランプ大統領が就任したときは、私はむしろ別の問題を心配していました。"ビジネスマン"だったトランプ氏がキューバのリゾート地を買いあさってゴルフ場やらホテルやらの建設に乗り出したらどうしよう、などと考えていたのです。

結果として、とんでもない方向性に行ってしまいました。オバマ・レガシーといわれたキューバへの融和路線がくつがえされたばかりではなく、制裁強化にかじを切ってしまい、対キューバ政策はますます厳しくなるばかり。

トランプ政権には、大統領選でライバル候補だった共和党マルコ・ルビオ上院議員など、キューバ系アメリカ人の側近がいます。対キューバ強硬派の重要人物のひとりです。彼はフロリダ州に住むキューバ系アメリカ人、つまりキューバ革命のときに財産を没収されるなどして米国に移住をしてカストロ政権にうらみを持つ人たち、を代表するような存在なのです。

キューバを訪れたこともない

現在49歳のマルコ・ルビオ上院議員はキューバを訪れたこともなく、彼の両親は1956年にキューバから米国に渡ったとのこと。つまり、キューバ革命(59年)を機に移住したわけでもないのです。

ただマルコ・ルビオ上院議員のように、キューバ系のアメリカ人のなかには「革命後のキューバ」ではなくて、「革命前の理想のキューバ」が頭にあり、それを取り戻したいという気持ちがある、というのはなんとなくわかります。

私は2000年に初めてキューバに行ったとき、ニューヨークに住んでいました。隣のニュージャージー州とともに、ニューヨークはキューバ系アメリカ人が多く住む地域です。当時勤めていた会社に、40歳くらいのキューバ系のアメリカ人男性がいました。

旅報告でしょっぱい表情に

私は当時、ラテンダンスのサルサを習っていたこともあって、その男性とはキューバの話でよく盛り上がりました。彼は「きらびやかなシャンデリアがある大広間で舞踏会が開かれていて、それはそれは素敵なんだよ」とまるで見てきたかように、キューバについて話すのでした。

初めてのキューバ旅行から帰ってきた私は、タイムトリップしたような景色やら、陽気な人たちやら、街にあふれる音楽やら、すっかりキューバのとりこになってしまったので、彼のところに早速キューバの旅報告に行きました。

すると彼の顔がみるみるくもるではありませんか。話を聞きながら、なんともいえないしょっぱい表情で、言葉少なだったのが印象に残っています。

大きく変わったイメージ

あとでよく聞いてみたら、彼は赤ちゃんのときにキューバから米国に移住したので、キューバの記憶はなく、キューバを訪れたこともないとのこと。目を輝かせて語ってくれた「古きよき」キューバの思い出は、ご両親から繰り返し聞かされてきたのでしょう。

革命後のキューバ政府を何とかして倒さなければいけないと考えている移民の人たちとともに、マルコ・ルビオ上院議員も、頭の中だけで「理想だった昔のキューバ」と「真っ黒な現在のキューバ」がせめぎあっているのかもしれません。

米国からは近くて遠いキューバ。2000年当時は「独裁者のいる貧民窟に何をしに行くの?大丈夫?」と米国人に心配されましたが、今は「キューバってとても景色のきれいなところだよね」と、やはり米国人にうらやましがられるようになりました。

マルコ・ルビオ上院議員は「自由な国になったら」キューバに行きたいと米メディアに話していましたが、今すぐに行って、その目で確かめて、キューバのリーダーたちと対話してほしい。想像していた怖~い国とは違うかもよ!?

 

*米国による対キューバの経済制裁については、大統領選前にYouTubeチャンネル「ケパサenミカサ」でも説明しています。

Author Profile

斉藤 真紀子
斉藤 真紀子
日本経済新聞米州総局(ニューヨーク)金融記者、朝日新聞出版「AERA English」編集、週刊誌「AERA」専属記者を経てフリー。共著に「お客様はぬいぐるみ」(飛鳥新社)。趣味はラテン音楽&ダンス、カポエイラ(格闘技)
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