米国のキューバ系移民、若い世代の葛藤と大統領選

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米大統領選について報じる、キューバ共産党機関紙「グランマ」

「キューバを懲らしめなくてもいいのではないか」
「もっと互いに対話をーー」

米大統領選挙の「激戦区」といわれるフロリダ州に住む、若い世代のキューバ系移民から、このような声が上がっています。

キューバ系移民は、キューバに強硬姿勢を示すトランプ大統領の支持層として知られています。世代間の意識の差は、選挙戦にどのような影響を与えるのでしょうか。

対キューバ強硬姿勢をアピール

フロリダ州はヒスパニック系(スペイン語を母国語とする中南米からの移民)が4分の1を占めますが、うちキューバ系は最多数です。

そのなかには、キューバ革命(1959年)後、財産を没収され、米国に移住した人たちが多く含まれています。

現在のキューバ社会主義政権に対しても敵対感情が強いため、キューバに厳しい姿勢を示す共和党を支持してきました。

こうしたフロリダ州のキューバ系移民に対し、「君たちの味方だ」と言わんばかりにアピールをしてきたのがトランプ大統領です。2015年に国交を回復したオバマ前大統領の融合政策をくつがえすようにして、キューバにこぶしを上げてきました。

しかし、こうしたトランプ政権の対キューバ強硬路線に「複雑な胸中」の人たちもまた、増えているのです。

親が言うほど「悪い国」なのか

とりわけキューバに対する思いにジレンマを抱えるのは、キューバ移民の2世や3世など、若い世代です。

親からはキューバの現政権について、ネガティブなことばかり聞いてきた。
しかし、実際にキューバの人と話をするとそこまで悪い国ではないらしい。
米国の経済制裁やプロパガンダに疑問を感じる。

こうした葛藤を、米国とキューバのジャーナリストが発信する、Belly of the Beastというメディア内の意見交換のなかでも聞きました。

Belly of the Beastは、フロリダ州マイアミやワシントンDC発のプロパガンダにねじまげられたキューバではなく、「ありのまま」の「内部から」のキューバを伝えることを目的として、ドキュメンタリーフィルムを発信してきました。

コロナ禍でキューバ医師たちがどのように対応したかを追う一方で、米国の経済制裁がいかに一般市民の生活に影響を与えてきたかも、伝えています。

キューバ人のジャーナリストとオンラインの対話を果たした、米国在住キューバ人のアンディさんは、
「これまで(自分たちキューバ系は)コミ(コミュニスト=共産主義者)とか、ラフター(いかだに乗って海を渡ってきたキューバ系移民を揶揄する表現)とか呼ばれてきた。でも、医療の取り組みなどキューバについて知り、自分のルーツに誇りが持てた」
「キューバが悪だと信じている親の世代に、米国のプロパガンダ政策とか、小さな国(=キューバ)に対して大きな国(=米国)が経済制裁することの意味とか、どうやって対話をしたらいいのだろう」
と心情を打ち明けていました。

誰が当選したとしても

もちろん、一口にキューバ系移民といっても、米国に来た時期もきっかけも様々です。「経済的にもっと豊かな生活をする機会を得たい」という人、いっとき米国で過ごして、家族や親戚や友だちがいるキューバにゆくゆくは帰りたいと考えている人もいるようです。

米国に住むキューバ人の、現社会主義政権に対する思いも、決して恨みつらみだけではないでしょう。

オバマ前大統領が、長らく国交断絶していたキューバとの雪解けを果たしてから、一時期キューバの観光地は米国人であふれかえっていました。一般の米国人の間で、キューバのイメージも大きく変わっています。

トランプ大統領にしても、バイデン候補にしても、当選したあかつきには、制裁一辺倒ではなく前向きにキューバとの関係を築いてほしいという人は、米国内外にますます増えているのではないでしょうか。

★中南米のニュースを解説する、「ケパサenミカサ」というYouTubeチャンネルでも、フロリダ州のキューバ系移民について説明しています。

Author Profile

斉藤 真紀子
斉藤 真紀子
日本経済新聞米州総局(ニューヨーク)金融記者、朝日新聞出版「AERA English」編集、週刊誌「AERA」専属記者を経てフリー。共著に「お客様はぬいぐるみ」(飛鳥新社)。趣味はラテン音楽&ダンス、カポエイラ(格闘技)
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