米国の世論は変化している? NYタイムズ紙に大統領への公開状も

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"Let Cuba Live" (キューバを生かして)

ニューヨーク・タイムズ紙に7月23日(米国現地時間)、"Let Cuba Live"と題する全面広告が載りました。バイデン大統領にあてた、400人の署名入りの公開状です。

「キューバを生かして」というメッセージには、「キューバを経済制裁から解放して」、「経済制裁をやめて正常な関係に戻して」といった意味がこめられています。

署名は米国内外から、「影響力のある」著名人、学者、政治家らを含む、個人や団体が参加しました。

俳優のジェーン・フォンダ、エマ・トンプソン(英国)、映画監督のオリバー・ストーン、言語学者・哲学者のノーム・チョムスキー、シンガーソングライターのシルビオ・ロドリゲス(キューバ)、ルラ元大統領(ブラジル)など。

「キューバ人とともにある」米大統領

バイデン大統領にあてた、Let Cuba Liveの公開状におけるポイントをまとめてみました。(全文はこちら

①キューバで起きた抗議活動の背景として、米国の経済制裁が人びとの生活を苦しめている。食料や医薬品不足、コロナ禍での経済制裁のもとで状況は厳しい

②食料や医療物資の輸入にはドルが必要なのに、米国民がキューバの家族へ送金するのを制限したり、キューバが世界の金融機関を利用できないようにしているのは道理に反する

③7月12日に(バイデン大統領は)「キューバの人びととともにある」と言ったが、それなら経済制裁の強制措置をなくすべき。冷戦時代の敵対関係や、オバマ元大統領が開いた国交回復への道を後戻りさせる道筋ではなく、両国間の関係を前進させ、まずキューバの食糧、医薬品不足を解消するのが最優先

マンハッタンの電光掲示板でアピール

公開状の新聞掲載に先駆けて、7月22日、ニューヨーク市(マンハッタン)の電光掲示板にも、Let Cuba Liveのメッセージがともりました。

LET CUBA LIVE  
キューバを生かして
STAND WITH THE PEOPLE IN CUBA? UNBLOCK THEM 
キューバの人とともにある?(バイデン大統領の言葉)それなら経済封鎖をやめよう
STOP BLOCKING FOOD OR MEDICINE FROM PEOPLE OF CUBA
キューバの人びとから食料や医薬品を遮断するのをやめよう
ECONOMIC WARFARE ON CUBA KILLS
経済戦争はキューバの息の根を止めることになる
CUBA SI, BLOQUEO NO! 
(合言葉)キューバ、Si(イエス!)、経済制裁、No(ノー!)
HANDS OFF CUBA
キューバに口出しするな

*こちらのツイート画像も参考にさせていただきました。

ニュース番組コメンテーターも同情

大規模デモの後、米国のニュース番組をネットで見ていて気がついたことがあります。キューバ政府、あるいは「共産主義」に対して批判的な論調のメディアでも、「米国による経済制裁がキューバ市民の暮らしに直接影響を与えている」という現実(あるいは論調)にはふれているのです。

保守系、共和党寄りといわれるFOXニュースでは、”反政府”デモが起こっている背景として「(キューバ政府が人びとを苦しめているのではなく)トランプ政権の経済制裁が苦境の引き金になっているわけ?」とキャスターやコメンテーターが半ば同情的なトーンでやり取りする場面がありました。

またキューバに厳しい論調も多いCNNニュースでも、キューバ系移民のコメンテーターが「現地は貧困に苦しんでいる」という印象を述べたあと、「(制裁が続く)米キューバ関係を見直したほうがいい」と話していました。

バイデン大統領は強硬姿勢

一方、バイデン大統領は、

「(米国は)キューバの人びととともにある」(12日、声明)
「キューバは失敗した国家」(15日、記者会見)
「国防相らにさらなる経済制裁を課す」(22日、声明)

と述べており、キューバの「民主主義」や「人権」を守るため、「キューバ政府に圧力をかけるべき」と、トランプ政権と変わらず強硬姿勢がみられます。

とはいえ、米国の市民のあいだで、「経済制裁はキューバに住む人たちを直接苦しめるものでしかない」という認識が広まっていけば、バイデン大統領も考えざるを得なくなるかもしれません。

国連でも米国のキューバ制裁解除を求める決議が賛成多数で可決されており、米国内や欧州でも、経済制裁の解除を求める集会が繰り広げられています。

フランス、エッフェル塔の前で、米国のキューバ経済制裁に反対する人びとが集まっている様子がツイートされていました。

米大統領がすぐにできること

バイデン大統領は自らの権限で、すぐにでも経済制裁を一部、緩和することができます。たとえば、米国民がキューバの家族へ送金するのは規制されていますが、これを撤廃できる。しかし、バイデン大統領は「(送金すれば)キューバ政府の手に渡る可能性がある」と、制裁緩和に否定的です。

バイデン大統領は2020年の大統領選挙出馬前、トランプ大統領のキューバ政策を変え、関係改善をはかると表明していました。オバマ元大統領がキューバと国交回復を果たしたときの副大統領だったため、こうした演説には説得力があったのですが…。

大統領になってからはキューバ政策に関与せず、半年が経ちました。ほかの重要課題に忙しかったのもあるでしょう。しかし、次期大統領選で出馬することも視野に入れ、大統領選の行方を左右する激戦区であり、現キューバ政府への反発が強いキューバ移民が多く住むフロリダ州市民を敵に回したくないからという見方もあります。

いずれにしても、「キューバを生かして」という世論が高まっているいま、フロリダ州のキューバ移民の声も考慮しながら、バイデン大統領はどう対応していくのか、注目が集まります。

 

 

Author Profile

斉藤 真紀子
斉藤 真紀子
キューバ倶楽部編集長、ライター。ニューヨークでサルサのレッスンを受けたのをきっかけに、2000年に初めて訪れたキューバが心のふるさとに。
旅をするたびもっと知りたくなるキューバを訪れ、AERA、東洋経済オンライン、TRANSIT、ラティーナ、カモメの本棚、独立メディア塾ほか多数の媒体で記事を執筆。
2015年にキューバの現地の様子や魅力を伝える「キューバ倶楽部」をスタート、旅の情報交換や勉強会、講演会などのイベントも運営。
★キューバのエッセンスを生活に取り入れる日々をnote(https://note.com/makizoo)に綴る。
★Twitter: @cubaclub98 ★ Instagram: @cubaclub98
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