売ります(Vendo)。ボール紙に書きなぐったような筆跡でしたためられた「物件広告」が木に貼り付けられています。
ここはハバナの中心地にあるプラド通り(Paseo del Prado)。夕暮れどきになると、家族や友だち、恋人たちが集まってきてベンチでくつろぎ、子どもたちはローラースケートで遊んでいる、大きな憩いの広場のようなスペースです。
大きな街路樹を掲示板のように活用していますが、なかにはボール紙の色が木になじみすぎて目立たないものも。
保護色で文字がわかりにくい、「売ります」広告
値段がいくらかわからない
物件広告は「新市街、2階、バルコニー付」といったおおまかな概要のみで、どれにも値段が書かれていません。
地元の人に「なぜ価格を表示しないのか」と聞いてみたら、「税金対策で、販売額を知られたくないのではないか」という声もあれば、「売る側、買う側両者の交渉でこれから決めるのでは」という説明もありました。不動産売却の税金は4パーセントということで、べらぼうな割合でもなさそう。
相場を知りたくて、インターネットでキューバの不動産売買価格を調べたら、ハバナの集合住宅(アパート)や一戸建など、数百万円から数千万円の価格が表示されていました。内装のメンテナンスや、広さなどが様々なので価格に開きがあります。
かつての豪邸に家賃ゼロで暮らす
キューバで不動産売買ができるようになったのは、2011年からと、比較的、最近の出来事です。1959年のキューバ革命後、家々は政府の所有になりましたが、市民はわずかな家賃を政府に払い終えてから、自分のものにすることができました。今は多くの人が家賃ゼロで暮らしています。
キューバの家は革命前に豪邸だった美しい建物も多く、街を走るクラシックカー同様、「プライスレス」な値打ちを見出す外国人旅行客も多いでしょう。それなのに「いい条件で売りたい」という気合いがみじんも感じられない、街角のシンプルすぎる物件広告に、少々拍子抜けしてしまいました。
Author Profile
- キューバ倶楽部編集長、ライター。ニューヨークでサルサのレッスンを受けたのをきっかけに、2000年に初めて訪れたキューバが心のふるさとに。
旅をするたびもっと知りたくなるキューバを訪れ、AERA、東洋経済オンライン、TRANSIT、ラティーナ、カモメの本棚、独立メディア塾ほか多数の媒体で記事を執筆。
2015年にキューバの現地の様子や魅力を伝える「キューバ倶楽部」をスタート、旅の情報交換や勉強会、講演会などのイベントも運営。
★キューバのエッセンスを生活に取り入れる日々をnote(https://note.com/makizoo)に綴る。
★Twitter: @cubaclub98 ★ Instagram: @cubaclub98
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