【インタビュー】失われつつある風景を映し出す「Cuba Libre #2」

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安達康介
写真展「Cuba Libre #2」を開催中の安達康介さん(写真は、民営のカフェテリアでモップがけをしていた男性)

景色やファッションに映り込んだ、はっとするような色合い。こちらを射抜くような人びとの強いまなざし。社会主義国の成り立ちや歴史を一瞬におさめたような特別なシーン。

 

写真家、安達康介さんのキューバ写真展「Cuba Libre #2」は作品のひとつひとつに、これぞ!というキューバらしさが濃縮されています。1997年から10回近く訪れたキューバで、安達さんは「最初は旧市街のさびれた雰囲気やクラシックカー、人々のいい表情を撮っていた」のが、回を重ねるごとに「これは何だろう?」と思って、学ぶことが増えていったのだそうです。

アメリカの経済制裁に抗議する看板

アメリカの経済制裁に抗議する看板

 

 

今回の展示では、14年と15年、それぞれ7月に訪れたハバナやサンチアゴ・デ・クーバの「アメリカ国交回復後に失われていくだろう景色」がテーマになっています。

 

人びとの暮らしはもちろん、歴史や社会に詳しい安達さんに解説をいただきながら、写真を眺めていると、次々とキューバへの興味の扉が開かれていきます。

 

安達さんに今回の撮影で伝えたかったこと、変わりつつあるキューバへの想いをお聞きしました。

チェ・ゲバラが街から消えていく?

サンチアゴ・デ・クーバ キューバ革命の端緒となるモンカダ兵営の式典

サンチアゴ・デ・クーバ キューバ革命の端緒となるモンカダ兵営の式典

 

 

Q: 失われつつある風景でとくに注目したのは?

安達: 社会主義国なので、企業広告はありませんが、「フィデルとラウル、永遠に」、「国民のための革命」といった政治的プロパガンダが看板になっている。そうした、この国ならではの景色が面白いと思っていました。とくに「アンチ・アメリカ」色のあるものは今後消えていくと思いますが、(革命のヒーローである)チェ・ゲバラはその象徴ですよね。彼の一途な生き方、理想に突き進んだ姿はすごい。彼のやり方は賛否両論あると思いますが、街中から彼の顔が消えていくのはさびしいですね。

 

Q: キューバの人たちの表情も印象的ですが、ファッションも面白いですね。

安達: ファッションは劇的に変わりましたね。97年に道を歩いていたら、「Tシャツくれ」、「ナイキの靴ちょうだい」なんてよく言われたものでした。女性は全身スパッツのような服装で、世界に取り残されていた感があったのですが、今はおしゃれになりました。南米から安く仕入れてきた服を個人商でマーケットに出す人もいて、昨年ワールドカップのときは(ブラジルの人気サッカー選手)ネイマールの髪型をしている男性が増えました。社会主義、資本主義に関係なく、若者がかっこいいものにあこがれ、真似するのは世界共通ですね。

 

逆境をやり過ごす強さが豊かさに

反政府活動で夫が拘束されている女性たちによる無言の抗議活動

反政府活動で夫が拘束されている女性たちによる無言の抗議活動

 

Q: 写真を撮るのに苦労することは?

安達: 昔はカメラを向けると、喜んでくれる反応が多かったのですが、キューバでも携帯やデジカメが普及して、こちらから働きかけないと撮れないようになりました。自然な表情を引き出すために、スペイン語を学んで、日本のことを説明するなど、会話をはさむようにしています。キューバにいると、石鹸で手が洗えない、トイレが清潔ではないなど不便な環境もありますが、得るものも多い。とくに豊かさについて考えるようになります。

 

Q: 豊かさについて考え方は変わりましたか?

安達: キューバ人はお金を持っている人が持っていない人にふるまう、というのが身についている。ごちそうをしてもらうということに後ろめたさがないし、逆にキューバ人のお宅に行くと、僕に料理をたくさん出してくれる。「平等」に対する概念が違うなと思いました。それから、逆境に対して、何とかやり過ごそうとする精神的な強さがあり、豊かだなと思います。車にしても、部品がなかったら作ってしまおうとするし、やることがなければ歌って踊って楽しく過ごそうとする。それは資本主義からみた豊かさとは違うものだと感じています。

 

→安達康介公式サイト KOSUKE ADACHI photography

 

安達康介写真展「Cuba Libre #2」 コニカミノルタプラザ 10月20日~29日まで

http://www.konicaminolta.jp/plaza/schedule/2015october/gallery_c_151020.html

Author Profile

斉藤 真紀子
斉藤 真紀子
日本経済新聞米州総局(ニューヨーク)金融記者、朝日新聞出版「AERA English」編集、週刊誌「AERA」専属記者を経てフリー。共著に「お客様はぬいぐるみ」(飛鳥新社)。趣味はラテン音楽&ダンス、カポエイラ(格闘技)
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