アニメオタクはなぜ多い?~キューバのネット事情②

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筆者撮影 ハバナのWi-Fiが使える公園でネット接続をする現地の人たち

筆者撮影
ハバナの公園でネット接続をする現地の人たち

ネット環境がすこぶる不便なキューバ。Wi-Fi(無線LAN)が使える場所は限られていて、数少ないスポットである公園は、スマートフォンを手に、たくさんの人が集まっています。

自宅の電話回線でインターネットを引くのは、お金がかかるし、スピードも遅い。 決して安くはないWi-Fiカードを購入し、屋外でネットにつなぐ。

その目的は、ネットサーフィンというより、外国にいる家族や親せき、友人とオンライン通話をするため、という人が多いようです。

発展途上なインフラ事情。国営テレビや新聞からの限られた情報量。こうしたキューバ特有の事情を考えると、こんな疑問が浮かんできます。なぜこんなにキューバのアニメ好きは最新作にも詳しいのだ!?

日本の最新テレビドラマも

アニメ好きがどのようにしてあまたの情報をゲットしているのか。キューバの国営テレビで定期的に日本のアニメがときどき放送されているとはいえ、しばらく疑問に思っていました。

アニメだけではありません。公式には入ってきていないはずの、ハリウッドの映画も、米国の最新音楽も、よく見聞きしている人が多い。

とくに若者層なのですが、米国のマイアミから飛んでくる、テレビの電波をキャッチしているのかしら、といぶかってみたり。

キューバのコミュニティサイト。求人広告や「売ります、買います」といった情報を掲載
(キューバのコミュニティサイト。求人広告や「売ります、買います」といった情報を掲載)

米国のトークショー番組も

あるとき、キューバ人の家庭を訪ねて、そのナゾが説けました。各地域で、ネットのコンテンツをダウンロードした、El Paquete Semanal(エル・パケテ・セマナ=英語でWeekly Package/ウィークリーパッケージ)とよばれる、ハードディスクが回覧されているのです。

最新のものでだいたい2~3CUC(約200~300円)。次の週になると、1CUCに値下げ、というふうに各地域で「誰か」が貸し出ししています。

まるで、キューバでよくある、洋服の個人販売のような感じです。 このハードディスクに入っている情報はキューバの生活情報から、米国、中南米、アジア等々のYou Tube動画や、映画やドラマなどのエンターテインメント作品など、バラエティに富んでいます。

18禁コンテンツはない

たとえば、revolicoとよばれるキューバの情報サイトは、家や車の売買をしたい、コンピューターの部品を譲ってほしい、仕事求む、外国での住み込みの仕事を紹介します、といった項目が各ページ、このハードディスクで閲覧できます。

左上は米国のコメディアンが司会を務める、人気トークショー番組の動画

左上は米国のコメディアンが司会を務める、人気トークショー番組の動画

日本の人気ユーチューバーのサイトも、日本で半年前くらいに放映されたドラマも、驚いたことに、スペイン語字幕がしっかり入っていました。

なるほど! だからキューバの人たちは、ネットが使えなくとも、アニメにも、日本のライフスタイルにも詳しいのだな! と合点がいったのですが、不思議なのが、誰も「ハードディスクの出所がわからない」ということ。

「誰がダウンロードしているんだろう?」と、キューバの人たちにこっそり聞いてまわりましたが、「マイアミの移住者ではないか」、「ネットにアクセスができる政府の関係者ではないか」など、みな首をかしげるばかり。

あくまでもアンダーグラウンドのハードディスクではあるけれど、まったくもって違法なのかといえばグレーゾーン。いわゆるアダルトサイトなど、キューバ政府の「積極的な取り締まりの対象」になるような内容は入っていないのです。

「引きこもり」になりにくいキューバ社会はどうなる?

このハードディスクが回覧されたのは、おそらくここ10年以内のこと。キューバは日本に比べて、「ひとりで部屋にひきこもる」のが難しい環境というイメージがありました。

家にはさまざまな人の往来がある。食卓は家族みんなで囲む。国営テレビは真面目な番組が多いので、外で集まってパーティをするほうが楽しい。 ただ、近年は回覧ハードディスクのおかげで、本格的な「アニメオタク」が増えているかもしれません。

Author Profile

斉藤 真紀子
斉藤 真紀子
キューバ倶楽部編集長、ライター。ニューヨークでサルサのレッスンを受けたのをきっかけに、2000年に初めて訪れたキューバが心のふるさとに。
旅をするたびもっと知りたくなるキューバを訪れ、AERA、東洋経済オンライン、TRANSIT、ラティーナ、カモメの本棚、独立メディア塾ほか多数の媒体で記事を執筆。
2015年にキューバの現地の様子や魅力を伝える「キューバ倶楽部」をスタート、旅の情報交換や勉強会、講演会などのイベントも運営。
★キューバのエッセンスを生活に取り入れる日々をnote(https://note.com/makizoo)に綴る。
★Twitter: @cubaclub98 ★ Instagram: @cubaclub98
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