激動を経験した国、キューバの魅力~2018年はどうなる?

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撮影:Miguel Meana (BMC Chief Photographer) 2017年11月26日フィデル・カストロ氏死去から1年、ハバナで新聞に見入る市民

撮影:BMC Life
2017年11月26日フィデル・カストロ氏死去から1年、首都ハバナで追悼記事を読む市民

まるで、タイムマシーンに運ばれてきたかのよう。およそ60年前に革命が起きてから、街並みはほぼ変わらない。当時のクラシックカーが色とりどりに街を走り抜けます。

ノスタルジックな風景に、あふれんばかりのエネルギーを放つ人びと。そこかしこに響く陽気な音楽。この独特な空気感こそ、キューバならでは。街を歩くだけで、自分の感情が鮮やかさを帯び、生きる力がみなぎってくるのが、何とも不思議な感じです。

「そろそろ、街並みが変わるのでは?」

そんなふうに、うわさされて久しいキューバ。革命以後トップの座にいた、フィデル・カストロ元国家評議会議長が現役を退いた2008年や、オバマ前米大統領がキューバを訪れて両国の国交正常化をはかった2015年、「マクドナルドやスタ―バックスが進出する前に」と、私も半ばあわてて、現地の様子を探りにいったことを思い出します。

ハバナは米国人観光客が激減

 

そして迎えた2018年。今年は、フィデル氏の弟、ラウル・カストロ国家評議会議長もトップの座を後任に譲ると発表しており、世代交代の時期を迎えます。しかし、変化の波はというと、やや後退ぎみな様子…。

「1歩進んで、2歩下がる」

キューバの変化をこう評したのは、キューバの状況に詳しい、旅行代理店トラベル・ボデギータの清野史郎さん。トランプ米大統領は対キューバの経済制裁を強化すると発表しました。一方、キューバでは、ラウル・カストロ国家評議会議長も、脱税等の問題を背景に自営業の新規認可に待ったをかけ、経済自由化政策がペースダウンしています。

撮影:BMC Live  2017年11月、ハバナ大学に集まった、キューバ革命の考え方を支持するFEU(大学学生連合)の学生たち

撮影:BMC Life 
2017年11月、ハバナ大学に集まった、キューバ革命の考え方を支持するFEU(大学学生連合)の学生たち

たしかに、私が昨年5月にキューバを訪ねたときは、若い米国人グループでハバナは大にぎわいでしたが、今はトランプ米大統領の政策転換により、渡航の規制が厳しくなり、米国人観光客は激減してしまったそうです。

変わりそうで変わらない。

そんなキューバですが、経済の疲弊でモノ不足に悩まされる市民たちの声は深刻です。何しろ食料や生活必要物資の入手もままならないのですから。

キューバの経済政策は、「搾取をしない、されない」ことを前提に成り立っているため、何か商売をしようとしても、その「自由」が限られてきゅうくつな思いをしている人も多いようです。私も、キューバの社会システムについて聞こうと、好奇心でキューバ人を質問攻めにしてしまうことがあるのですが、しまいに”That’s Cuba.”(それがキューバだからね)とあきらめにも似た返事が返ってくることもあります。

変わらないキューバに期待してもいいのか

 

こうした現実をふまえると、「変わらないキューバの魅力」を、国の外で暮らす私が強調することに、ためらう気持ちがないかと言われれば、いささか複雑な心持ちです。

ただ日本に住む私に言えるのは、いまのキューバとキューバに住む人からじかに「すっげー」と多いなる刺激やパワーをもらえること。いまのキューバのあり方の背景に激動の時代を生き抜いた歴史があり、それを知ることで世界全体の見方が変わること。そして私たちが日本で直面している社会や生活の問題を考えるとき、社会システムが大きく異なるキューバから学べることが多々あること。キューバに行っても行かなくても、そうしたことにふれる価値はやはり大きいということ。

2015年からキューバ倶楽部を通じて、さまざまな出会いや学びの機会を経て、そうした気持ちを新たにしました。

撮影:BMC Life 2017年8月にカリブ海を直撃し、キューバにも大規模な被害をもたらしたハリケーン・イルマ

撮影:BMC Life
2017年8月大規模な被害をもたらしたハリケーン・イルマ直後のハバナの様子。建物損壊など被害も多く、キューバ経済に打撃を与えた

キューバはあっという間に変わるかもしれないし、しばらく変わらないかもしれない。しかし、やはり今のキューバにふれることは、ちょっと道を踏み外したくなるくらいに、生き方を考えるきっかけになる。私たちにとって、それほど強烈なインパクトを持つ国ではないかと思うのです。

これまで活動を支えてくださった皆さんへの感謝とともに、2018年もキューバを通して、さまざまなかたちでインスピレーションを得られる場、そして情報発信の機会を設けたいと思います。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

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斉藤 真紀子
斉藤 真紀子
日本経済新聞米州総局(ニューヨーク)金融記者、朝日新聞出版「AERA English」編集、週刊誌「AERA」専属記者を経てフリー。共著に「お客様はぬいぐるみ」(飛鳥新社)。趣味はラテン音楽&ダンス、カポエイラ(格闘技)
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