キューバと日本、ワクチンをめぐる環境の違い~駐日大使の講演会より

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ミゲル・アンヘル・ラミレス駐日キューバ大使が4月14日、新型コロナウィルスのワクチン開発について、オンライン講演会を開きました(このページの最後に講演の動画リンクがあります)。

キューバは国内で5種類の新型コロナウィルスのワクチンを開発しており、うち3種類が最終段階の臨床試験に入りました。

スピード感のある開発とともに、キューバ市民へのワクチン接種の見通しも示しました。

〇6~7月に国が緊急承認

8月までに700万人が接種(キューバの人口は約1148万人)
12月には国民全員が接種

東京オリンピック参加選手も、全員ワクチンを打ってから日本に来るので大丈夫」(大使)とのことです。

研究機関を総動員してワクチン開発

スピード開発の背景には、長年にわたるワクチン開発の経験や、政府が大学や研究機関を総動員してひとつにし、開発を進めたことがあります。開発の費用は、政府が負担しました。

この講演会には、薬剤師でもある、自民党の本田顕子参議院議員も参加して、日本でワクチン開発が及び腰になる理由として、「ワクチンの副反応に対する懸念」を挙げ、キューバの人びとの反応を尋ねていました。

私自身、子宮頸がんワクチンの健康被害に関する報道が気になりますし、ワクチン一般に対して不安がありますまわりでも、新型コロナウィルスのワクチンを受けたい人、受けたくない人、意見が分かれています。

キューバではこのようなことはないのでしょうか。

臨床試験にも、多くのボランティアが参加しているキューバですが、ラミレス大使は「キューバの国民はワクチンへの信頼感が強い」と話していました。

キューバでは、米国による経済封鎖などで、欧米の治療薬が入手できなかったことから、自国民の健康を守るため、免疫力を高めたり、病気予防のためのワクチンを開発したりする必要があったという事情もあります。

実際に、キューバではワクチンの成果で18歳以下のB型肝炎を根絶するなど、実績も積み上げてきました。

オンライン講演会でキューバのワクチン開発の説明をするミゲル・アンヘル・ラミレス駐日大使

キューバのワクチン開発は「革新的」

こうしたキューバの医療システムに、米国の医療従事者は長年にわたり、高い関心を示してきました。キューバを視察して学んだり、医療の分野で協力したりする機会も作ってきました。

大使の講演の最後の部分(1:08:55ぐらいから)で、米メディアCNNで放送された、世界最古のがん研究所である、ニューヨークのロズウェルパークがん研究所の所長によるコメントがあります。

キューバのワクチン研究チームのことを"out of the box"(革新的)と表現し、高度な機器や試薬が手に入らない環境で、頭を使って成果を上げていると説明していました。

ロズウェルパークがん研究所では、米国政府の認可を受け、世界でキューバのみが開発している、肺がん治療のワクチンの臨床試験を実施しています。

今回、キューバの新型コロナワクチン開発が米国でも大きく報じられていますが、米国とキューバの関係改善にとっても、よい影響があるかもしれません。

ワクチンを販売するキューバの戦略

講演会のなかで、キューバでワクチンを開発しているフィンレイ研究所の所長の言葉が引用されていました。

「ワクチンを販売するキューバの戦略は、人類と世界の健康の影響を結び付けたもの。我々は金銭的目的を第一とする多国籍企業ではない。我々の目的はさらに多くの健康を作りだすこと

ワクチン開発の土台にある、「人びとの健康を守りたい」という思いが伝わっています。

開発コストが低いキューバのワクチンは、中南米をはじめ、中東、アフリカなど55か国から購入の希望があるそうです。

 

Author Profile

斉藤 真紀子
斉藤 真紀子
キューバ倶楽部編集長、ライター。ニューヨークでサルサのレッスンを受けたのをきっかけに、2000年に初めて訪れたキューバが心のふるさとに。
旅をするたびもっと知りたくなるキューバを訪れ、AERA、東洋経済オンライン、TRANSIT、ラティーナ、カモメの本棚、独立メディア塾ほか多数の媒体で記事を執筆。
2015年にキューバの現地の様子や魅力を伝える「キューバ倶楽部」をスタート、旅の情報交換や勉強会、講演会などのイベントも運営。
★キューバのエッセンスを生活に取り入れる日々をnote(https://note.com/makizoo)に綴る。
★Twitter: @cubaclub98 ★ Instagram: @cubaclub98
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