治安のよさはキューバ人の誇り?(前編)

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カップルのうしろにも警官が!

カップルのうしろにも警官が!

 

キューバは治安がいい。そういうと、たいていの人が意外な顔をします。アメリカはこの4月まで、キューバを「テロ支援国家」に指定していましたし、フィデルとラウル・カストロ兄弟による独裁支配が続き、アメリカと敵対する「ヒールの立ち位置」というイメージが強いからでしょう。

 

実際、キューバほど、ちまたにあふれるイメージと「行ってみた印象」のギャップが大きい国はないのではないかと思います。映画「チェ 28歳の革命」、「チェ 39歳別れの手紙」(2009年)でチェ・ゲバラ役を演じたアメリカの俳優、ベニチオ・デル・トロにインタビューしたことがありますが、キューバの印象を聞いたら、「アメリカで悪魔のような国だと教わっていた」けれど、メキシコの本屋で『チェ・ゲバラ日記』をたまたま手にして、「もしかしてイメージと違うかも?」と感じ、ビザなしで何度もこっそり訪れて、キューバに「ほれ込んで」、映画を作ったと話していました。

 

この社会主義国の「悪魔のイメージ」が「行ったら危ない」という、観光客の想像をかきたてているのかもしれません。

 

たしかに、アメリカとの政治上の確執はともかく、キューバは圧倒的な物資不足ですし、外国人用の通貨(CUC)と地元の貨幣(CUP)の価値は25倍ほどの違いがありますから、地元の人からすると、観光客がみんな「金持ち」に見えても仕方がありません。

 

だからといって、観光客=金持ちだから、タックルしてでも金品を狙うか、といえばそれはまた別の話。

 

治安のよさをはかる明確なものさしはありませんが、女性でも夜も街を一人歩きできますし、スリなどの軽犯罪はともかく、暴行がらみの大きな犯罪に巻き込まれない安心感もあり、中南米諸国のなかでは群を抜いて安全な国といわれています。これについてキューバの若者が「観光客に話しかけているのを見ると、警官がIDの提示を求めてきていちいちうるさい」と文句を言いながら、「この国は問題山積みだけど、治安がいいのは誇るべきところ」と語っていました。警察官は街のいたるところに立っていますし、私自身がニューヨークやブラジルの一部の地域で感じた、身が引き締まるような緊張はありません。

 

絶対におすすめはできませんが、ハバナで荷物をテーブルやいすに置いたまま席を立っている人もよく見かけました。「バッグごと」盗まれるという危機意識が薄いのかもしれません。初めてキューバに行ったとき、ホテルに何万円という現金を置き忘れて外に出てしまったのですが、あわてて戻ると、お金はそのままにしてあり、「何か困ったことがあったらいつでも言ってください。すてきご滞在を」と書かれたハウスクリーニングの女性の手書きカードとともに、ホテルの部屋が掃除されていて驚いたこともありました。単なる幸運かもしれませんが、一般の人は道徳観や倫理観が強いのではないかというのが私自身の印象です。

 

もちろん、持ち物は自分でしっかり守るに越したことはありません。たとえばよく言われるのが、キューバでは入手しにくいカメラやスマートフォンなどが狙われることが多いということ。私も2008年、レストランでライブ演奏を聴いていたのですが、少しの間、立ち上がって万歳しながら踊っていたすきに、かばんに入れておいたデジカメだけが消えていました。椅子の上に置いていたバッグには財布やノートパソコンも入っていましたがそれは無事。私がデジカメで写真を撮っていたのを誰かが見ていて、ピンポイントで狙っていたのかもしれません。

 

むしろ、犯罪というより「お友だちになって楽しい時間を過ごしたあと、高いドリンク代をおごらされる」といった、微妙にたかる人たちに注意。これをどうかわすのかは後編に続きます。

 

【後編配信開始しました。】

→治安のよさはキューバ人の誇り(後編)

Author Profile

斉藤 真紀子
斉藤 真紀子
日本経済新聞米州総局(ニューヨーク)金融記者、朝日新聞出版「AERA English」編集、週刊誌「AERA」専属記者を経てフリー。共著に「お客様はぬいぐるみ」(飛鳥新社)。趣味はラテン音楽&ダンス、カポエイラ(格闘技)
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