【インタビュー】日本人もぐっとくる、SON四郎の演奏で「ソンを知ろう!」

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SON四郎のmuchoさん、小泉哲夫さん ギターのMuchoさん、ベースの小泉哲夫さん  

キューバ人の前で日本語のソンを

――メンバーの特色は?
都筑:ひとりひとりのキャラクターがしっかりあって、見た目も個性的。音楽経験も豊富で、互いにコミュニケーションをとれば、いいものができる。ライブはいつも4人が主役で、それぞれがステージづくりに関わっています。  

――キューバらしさをどのくらい意識していますか?
都筑:ソンはキューバ音楽のジャンルなので、ひとりひとり勉強も意識もしています。ただキューバのバンドを目標にしているわけではなく、「日本人がソンを演奏している」ことを、逆に個性にしている。いつかキューバの人たちの前で、日本語のソンを披露したいですね。  

Makoto:ソンは自分たちにとってはふだん使う言語のように身近なもの。キューバで公演をするなら、僕たちがキューバの音楽を日常に取り入れて、楽しんでいる様子を伝えながら、里帰りさせるようなイメージです。  

――キューバツアーの計画は具体化していますか?
都筑:キューバのラジオ番組で、アルバムの曲をかけてもらったりしています。演奏の招待状も届いているので、機が熟したら実現するでしょう。

インタビュー中の様子 インタビュー中の様子  

日常生活をそのまま歌に

――メンバーはどのようにして集まったのですか?
都筑:僕がリーダーとして、ソンのバンドを作ろうと考えたときに、エンターテインメント性と親しみやすさを重視して、キューバの歌をやりたかった。この4人はソンを身近に感じ、演奏してきたメンバーだったから、できると思いました。たまたま神奈川県藤沢市のトウッティ(Tutti)というお店で、小さいバンド編成のラテン音楽を演奏してほしいというリクエストがあったのがきっかけでSON四郎が結成され、毎月ライブ活動を続けながら、全国で演奏しています。  

――ソンはどのような内容の歌詞が多いのですか?
Makoto:キューバの日常すべてが含まれています。かなり歴史のある音楽なので、風景だったり、街角でおこる出来事だったり、日常生活が、そのまま曲としてうたわれてきた味わいがありますね。サルサでは、恋愛や社会的な風刺が歌われることも多いのですが、キューバのソンは「果物が街角で熟れているようだ」とか、「美味しい食べ物売りがやってきたよ」とか、「音楽家が来たけれどお母さん、私もあのひとたちと歌いたい」というふうに情景が浮かんでくる感じです。  

都筑:もともと音楽は生活に密着しているもの。僕の個人的な意見としては、キューバだからこそ、生活からうまれた歌が残っている。社会主義のシステムで、外の情報が入りづらかった分、伝統のソンがそのままのかたちで残っているのではないかと思っています。  

――これからSON四郎はどのような進化を遂げていくのでしょうか?
都筑:今も進化を続けていると思いますが、ソンのライブだけではなくて、いろんなコラボレーションの機会を増やしていきたい。昨年10月のイベントのように、キューバをテーマにした映画とのコラボだったり、将来はもしかしたら歌舞伎とコラボレーションしたりするかもしれない。音楽も、日本発のものやジャズなど、ジャンルを超えた交流を通して、ソンの可能性を試してみたい。そもそも、米国やキューバはラテン、ジャズなど地域のミュージシャンの交流が盛ん。日本はジャンルで線引きしがちなので、ソンとサルサ、あるいはダンスのスタイルなど、カテゴリーを作ってしまうことが多いのですが、僕は「わけられない」音楽でいたい。  

Makoto: 寿司屋で大きいステーキ出てきちゃった、みたいな感じで(笑い)。 都筑:そういうインパクトがほしいな。ジャズのフェスティバルにSON四郎が出たりね。「あれ、ジャズでない!」と驚かせる。2~3年前からは、そういった試みもしています。ラテン音楽という枠をもっと広げていきたいですね。昨年10月の「五感でキューバを感じる」イベントのように、映画と音楽と料理でコラボレーションをする企画などは、前例がないものです。誰もどんな場になるのかわからないような空間をつくっていくのが、結果的に若いミュージシャンの活躍にもつながっていくのだと思います。  

早いうちにキューバへ!

――メンバーのみなさんにとって、キューバとの関わりで印象深かったのは?
小泉:日本にいると、いろんなしがらみにとらわれて生きていますよね。便利で当たり前に感じていることも多い。キューバに行くと、そういうものから解き放たれて、自分を開放できる感じがします。とくに、キューバに住んでいる人びとの考え方や生活のスタイルは、まわりの人の目を気にしがちな日本人からみると、物質的にはいろいろ制限があるのに、自由な印象を受けます。

Makoto: ハバナに行ったら、地方都市に足をのばしてみるのがおすすめだと思いました。京都や奈良のように、キューバを知るために訪れるといい場所がたくさんあります。

Mucho: キューバの人と交流すると、とても面白い体験ができます。ぜひ現地に行ったら、多くの人と話ができるといいですよね。キューバで、昔のNHK連続テレビ小説「おしん」(83年)や、メジャーリーグのイチローも、キューバではよく知られているんですよ。日本の話で盛り上がることもあります。

都筑:日本とキューバは実はすごく密接な関係があります。日本はいろんな面でキューバに援助もしているし、交流もあるけれど、米国との関係もあって、日本にキューバの情報が入りにくかったから、すごく遠い国と感じる。実際、キューバを訪ねると、物不足で不便さも経験しますが、「ものを大事にする」とか、「人とコミュニケーションをとる」とか、いま学ぶべきことがすごくある。キューバは楽器がないから、みんな本当に大切に使っています。

Makoto: そうしたキューバの生活スタイルが今後なくなっていく可能性がある。訪ねるなら今でしょ!

都筑:日本人が忘れてしまった精神がいまキューバにはある。それを体験してほしいですね。携帯がなくても生きていける。教育制度が整っているので、貧しくても、倫理面がしっかりしていて治安もいい。キューバは世界的にみても特殊な国で、ゆえにユニークな音楽もうまれています。今の日本人が一番行くべき国でしょう。キューバ人が今の日本人から学ぶことより、日本人がキューバ人から学ぶことのほうが多い。だから早いうちにキューバに行ってください。  

【CD】 デビューアルバム『Para ti』 2015年リリース。ライブをメインに活動してきたSON四郎による、古典や日本語歌詞のオリジナル曲などを含めた臨場感あふれるサウンドが集まった  

【ライブ情報】 SON四郎FBページ

2016年2月27日(土) 
藤沢SON四郎 https://www.facebook.com/SON460/
場所: 藤沢Tutti http://tutti-5f.com/blog/ 藤沢市鵠沼石上1-7-1 ケインズタワー5F
時間:開場18:00 開演19:00  

Author Profile

斉藤 真紀子
斉藤 真紀子
キューバ倶楽部編集長、ライター。ニューヨークでサルサのレッスンを受けたのをきっかけに、2000年に初めて訪れたキューバが心のふるさとに。
旅をするたびもっと知りたくなるキューバを訪れ、AERA、東洋経済オンライン、TRANSIT、ラティーナ、カモメの本棚、独立メディア塾ほか多数の媒体で記事を執筆。
2015年にキューバの現地の様子や魅力を伝える「キューバ倶楽部」をスタート、旅の情報交換や勉強会、講演会などのイベントも運営。
★キューバのエッセンスを生活に取り入れる日々をnote(https://note.com/makizoo)に綴る。
★Twitter: @cubaclub98 ★ Instagram: @cubaclub98
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