【インタビュー】 アフロキューバンで表現する「味」

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キューバのアフロダンサー、ダンサーのMakoさんとHirakataさん

アフロキューバンのダンサーのMakoさん(奥)とHirakataさん(手前)。

 

大地から湧き起こるような、力強くて、速い太鼓のリズム。キューバンアフロダンスは、そんなパーカッションにあわせて、情熱を身体いっぱいで表現する、複雑な動きが特徴だ。日本の「わびさび」とは対極にある、激しくダイナミックな動きや感情のほとばしりを、どのようにダンスに取り入れているのか。ペアを組んで約10年になる、ダンサーのMakoさんとHirakataさんに話を伺った。

 

――アフロキューバンのダンスはどのようにして生まれましたか?

Hirakataさん:キューバで15世紀から続いたスペイン統治後、アフリカから奴隷が連れてこられましたが、そのときに、さまざまな部族がそれぞれ踊りの文化を持っていました。部族によって違うものだったり、共通点があったりもします。

Makoさん:キューバに来てからも、また発展したので、もともとのアフリカの踊りと違うものもあります。地域によってもまた、スタイルが違うんですよ。

――激しい動きや男女のかけ合いにはどんな意味があるのですか?

Makoさん:たとえば、男女のかけ合いで、男性が女性の股にむかってアタックをして、女性がよける。それが決まれば、女性がお持ち帰りされるので、女性は「あなたのものにはならない」と男性をふりまわす、ゲーム性があるものや、木の棒で戦いあったり、奴隷が雇い主に反抗したり、怒りやエネルギーをぶつけるようなものもあります。日本の観客がひいてしまうのではないかと思うくらい激しいですね。

――リズムにのって踊るサルサと違って、アフロキューバンは「心を表現する」要素が強いですよね。

Hirakataさん:恋愛よりももっと根源的な部分から発するものだと思います。アフロキューバンの音楽も根底は同じ。太鼓、ベース、ボーカルすべてがそうですが、キューバならではの、毎日の生活からつちかってきた、「サボール」(味)を表現している。カウントに合わせて踊るのではなくて、感情の深いところに自分を置いて、そこからわきあがるものを動きにしていく。

Makoさん:サボールは、「味わい」ともいえますが、それを感じる心にふれるのがアフロキューバンだと思います。

恋愛感情は小出しに

インタビュー中に笑みがこぼれるmakoさん

インタビュー中に笑みがこぼれるMakoさん

 

――サボールを感じる心を知るには、やはり現地での体験が必要でしたか?

Makoさん:現地でカサ・パルティクラル(民宿)に滞在しているときに、そこの女主人が朝、窓をあけて、深呼吸して、「ケ・リコ!」(何ていい空気でしょう)と叫んだのです。とっても美味しいものを食べたときのような表情で。日本でなかなか目にしない場面なので、とっても驚きました。こんなふうに、キューバの人は日常にあるものでも心から楽しみ、それを表現することを惜しまない。感受性が豊かで、うれしいときはうれしい、悲しいときは悲しい、怒っているときには怒るというふうにストレートに表す。ですから、「サボール」を表現するとき、キューバでの体験を思い出します。

――男女の恋愛の駆け引きをするダンスでも、そうした感情表現がいかされるのですよね?

Makoさん:そこは面白いもので、「好き、好き」と全部感情を出すのではない。「つい、思いが出ちゃった」という感じです。

――感情表現が大きい分、動きもダイナミックになりますが、ダンスとしては難しいですか?

Hirakataさん:ふだんの生活でも、キューバの人は、日本人がしない動きをすることがありますが、ダンスはさらに、そうした動きが研ぎ澄まされます。

Makoさん:キューバ人ダンサーは身体能力が高いので、肩の動かし方ひとつでも、同じようにするのが難しい。基礎の基礎から、筋肉を分解して考えて、ここは動かさないで、こちらを動かすというふうに理論的に頭に入れます。見よう見まねでは、できないです。

キューバ人も説明できない動き

 

――キューバ人ダンサーの動きに、どのようにして近づきましたか?

Makoさん:ひたすら、おたくのように研究しました。わからないところは先生に聞きまくり、何度も音を聴き、先生の動きをビデオを撮って、どの太鼓に合わせて動いているのかを確認しました。ただ、いくら聞いても、「キューバ人のダンサーにとっては当たり前の動き」というのもあります。これ以上説明できないと言われると、そこからは自分たちで方法を探すしかないのですが、その作業も面白かったですよ。

――そもそもアフロキューバンダンスとの出会いは?

Hirakataさん:映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』が流行っていたころ、友人に誘われて、キューバンサルサのレッスンに行きましたが、ソン(伝統音楽)を聴いて、自分はこちらが好きだと思いました。90年代の最後ぐらいにキューバに行き、ルンバにも出会い、アフロキューバンが面白いと思って、それからはまっていきました。

学生時代から、ブルースとかR&Bとかを聴いていて、ディープなアフロのエネルギーが好きでした。そのころ、ギターも弾いていたのですが、アフロキューバンダンスは、自分の身体で表現ができる。キューバの神髄に近づきたいという気持ちでずっとやってきましたが、なかなかつかませてもらえないですよ(笑)

部族によって異なるリズムや身体の動き

公演中。

インタビュー後の公演中の様子。ご夫婦で息のあった動きを披露されていました。

 

――Makoさんのきっかけは?

Makoさん: 私は杉本彩さんがテレビでサルサを踊っているのを見て、「こういう感じに私もなりたい」と、軽い気持ちで始めました。キューバンスタイルに限らず、いろんなサルサの教室に行き、音楽のルーツであるキューバに行こうと、2000年ごろ、4日間旅をしました。現地でもダンスを習いましたね。その先生が、日本でワークショップをすることになり、あとで連れてきてくれたのがアフロキューバンの先生だったんです。踊りを見て、身体に衝撃が走ってしまいました。音楽やリズムの前に、ひとりに人間が動く姿を見て、これほどきれいと思ったり、感動したりしたことがなかったから。すっかり打たれてしまって、アフロキューバンにどっぷり入っていきました。

アフロキューバンはひとくくりになっていますが、部族によって、踊りもリズムも、身体の動かし方も違うので、それを習うのがまた面白くて、ますますひきこまれていきました。キューバには数年に一度、1か月半ぐらい滞在して現地の先生に習いますが、いろんな地方にも行って、違う種類の踊りを習っています。

――キューバに行ったら、一般の人も現地でアフロキューバンを観たり、踊ったりできますか?

Makoさん: ハバナでしたら、定期的にレッスンをしているところもありますし、生太鼓でアフロキューバンのイベントが毎週土曜日に開かれていました。ハバナでしたら、ルンバのダンスも見られますし、踊る人専用のホールもありますよ。

Hirakataさん:今、アメリカやヨーロッパで踊られているサルサのなかに、アフロキューバンの動きを取り入れているのが流行っているみたいです。サルサ好きの人にとっても、アフロキューバンを体験してみるのは、面白いかもしれませんね。

 

Mako & Hirakata レッスン、パフォーマンス情報はこちら

http://afrocubana.blog60.fc2.com/ (Mako)

http://abakua.blog.fc2.com/  (Hirakata)

 

Author Profile

斉藤 真紀子
斉藤 真紀子
日本経済新聞米州総局(ニューヨーク)金融記者、朝日新聞出版「AERA English」編集、週刊誌「AERA」専属記者を経てフリー。共著に「お客様はぬいぐるみ」(飛鳥新社)。趣味はラテン音楽&ダンス、カポエイラ(格闘技)
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