「サルサは聴かないし、全然踊れない」。若者が口ぐちに言うので、衝撃を受けたのはキューバを2008年に訪れたときでした。
音楽やダンスがきっかけで、キューバに興味を持つ人は多いはず。私もそうでした。初めてサルサを聴いたときは血が騒ぎすぎて逆流しそうになり、いっときサルサダンス中毒にもなったほど。
「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(映画、1996年)のいぶし銀がかったメロディもまた心にぐっときます。 厳密にいうと「サルサ」はキューバ生まれではなく、「ソンやルンバといったキューバ音楽が海を渡り、ニューヨークなどでアレンジされて誕生した」のですが、そうしたウンチクはさておき。「キューバン・サルサ」は音楽でもダンスでも、ひとつのジャンルとして存在感を放っていて、やはりキューバといえばサルサなのです。
キューバの今どきの若者がレゲトンや欧米のポップ、ロック、R&Bあたりを好むと聞いて、思わず「もったいない」と叫んでしまったのですが……。
まあ、それは私も同じことで、アニメ好きな外国人に話を振られてもちんぷんかんぷん。しまいには、「日本に住んでいるのにアニメを見ないで、休日何やっているの?」と聞かれてしまいました。私も、もったいない日本人なのです。
はたしてキューバで本場のサルサは楽しめるのか。答えは「イエス!」なのですが……。
観光客が集まるレストランやバーでは、定番のナンバーを生演奏でたっぷり聴かせてくれます。
キューバでは、選ばれし才能が6年かけて音楽大学で楽理と楽器演奏を学んでも、仕事がなくてプロのミュージシャンではなかなかやっていけないそうです。
そうした事情ゆえか、流しの演奏家が上手すぎて度胆を抜かれることも。 せっかくキューバに来たからには、ディープな場所で現地の人と音楽を楽しみ、できれば一緒に踊りたい。
そう思うと、なかなか一筋縄ではいかないのがこの国の面白いところ。話は2000年にさかのぼります。
(後編に続く)
Author Profile
- キューバ倶楽部編集長、ライター。ニューヨークでサルサのレッスンを受けたのをきっかけに、2000年に初めて訪れたキューバが心のふるさとに。
旅をするたびもっと知りたくなるキューバを訪れ、AERA、東洋経済オンライン、TRANSIT、ラティーナ、カモメの本棚、独立メディア塾ほか多数の媒体で記事を執筆。
2015年にキューバの現地の様子や魅力を伝える「キューバ倶楽部」をスタート、旅の情報交換や勉強会、講演会などのイベントも運営。
★キューバのエッセンスを生活に取り入れる日々をnote(https://note.com/makizoo)に綴る。
★Twitter: @cubaclub98 ★ Instagram: @cubaclub98