ハバナ中心地、再開間近だったホテル・サラトガ爆発の衝撃

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骨組みがさらされ、がれきが積み重なる痛ましさ。ハバナの中心地に位置する、19世紀建築の高級ホテル、サラトガで5月6日(現地時間)に起きた、ガス爆発の救助活動が続けられています。

AP通信によると、5月8日現在、少なくとも27人が亡くなりました。そのなかには、子どもや妊婦も含まれています。スペインの観光客が巻き込まれたとの情報もありました。負傷者は81人にのぼり、行方不明者の捜索が続いています。

事故のあと、キューバですぐさま数多くの人たちが献血にかけつけたと、複数のメディアが伝えていました。被害がこれ以上、広がらないよう祈るばかりです。

米国のセレブも宿泊する人気ホテル

サラトガは、ハバナ旧市街のすぐ近く、観光に便利な地域にあります。カピトリオ(旧国会議事堂)や中央公園、夜のライトアップも美しいグラン・テアトロ・デ・ラ・ハバナが集まる中心地です。

このあたりは高級ホテルが並んでおり、サラトガも、屋上にプールやバーがある、人気のホテルでした。2013年に米国のミュージシャン、ビヨンセとジェイ・Zの夫婦も宿泊したそうです。

96部屋を抱えるサラトガは、コロナの影響で営業を停止していましたが、約2年2カ月ぶりに5月10日(火)からの再スタートに向け、改装を進めてきました。

キューバの軍が経営を担う国営のホテルで、事故の被害者には、従業員が多く含まれていると発表されています。

米国との国交回復で変わったホテル事情

キューバのホテル事情は、15年に米国とキューバが国交を回復したころから大きく変わりました。

16年3月、オバマ米大統領(当時)やローリング・ストーンズがキューバを訪れたとき、私もハバナにいたのですが、世界からメディア関係者や旅行客がつめかけ、ホテルや民泊を含めて空きが一部屋もありませんでした。

キューバに滞在していた方からの口利きで、ある民泊のオーナーの部屋に宿泊させてもらいましたが、オーナー(女性)はリビングの床に寝ていて、申し訳ない気持ちでいっぱいだったのを思い出します。

こうした時期もあり、米国からの観光客を含め、旅行需要を見込んだキューバは、さらに観光に力をいれるべく、国営ホテルを改装したり、外資を入れたホテル建設を進めたりしました。

観光への逆風と応援メッセージ

ところが、17年に就任したトランプ米大統領は、対キューバ経済制裁をさらに強め、クルーズ船のキューバ寄港も禁止したため、観光には打撃となりました。

さらに、20年3月からはパンデミックの水際対策で、観光客はしばらくキューバに入国できなくなりました。

ようやく21年11月から観光客の受け入れが始まると、避寒のためロシア人観光客が数多く訪れました。しかし、2月にロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まり、キューバを訪れていたロシア人は帰国してしまいました。

こうした逆風が続くなか、今回の事故が発生したのです。観光への影響はどうなるのか。こうした心配も聞かれます。

一方で、SNSには今、世界各地からキューバへの応援や、「何かできることはないか」と問うメッセージがあふれていて、心強さを感じました。

Author Profile

斉藤 真紀子
斉藤 真紀子
キューバ倶楽部編集長、ライター。ニューヨークでサルサのレッスンを受けたのをきっかけに、2000年に初めて訪れたキューバが心のふるさとに。
旅をするたびもっと知りたくなるキューバを訪れ、AERA、東洋経済オンライン、TRANSIT、ラティーナ、カモメの本棚、独立メディア塾ほか多数の媒体で記事を執筆。
2015年にキューバの現地の様子や魅力を伝える「キューバ倶楽部」をスタート、旅の情報交換や勉強会、講演会などのイベントも運営。
★キューバのエッセンスを生活に取り入れる日々をnote(https://note.com/makizoo)に綴る。
★Twitter: @cubaclub98 ★ Instagram: @cubaclub98
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