キューバで得たアイデアを作品に~ディネルソンさん個展”From the Other Room”

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目の覚めるような色づかい。こちらに語りかけてくるような、エネルギッシュな筆致。

絵画でありながら、躍動しているような感覚を呼び起こされる、キューバ人アーティスト、ディネルソンさんの初個展"From the Other Room"が東京、自由が丘で開かれています。

ハイチ系キューバ人四世として、キューバで生まれ育ったディネルソンさん。視覚芸術にあこがれて育ちながらも、とくにアートの教育を受ける機会はありませんでした。2015年に来日して、「絵画の創造的な可能性に目覚めた」といいます。

アーティスト集団との交流で開眼

さらにアーティストとして開眼したきっかけは、一時帰国した17年にキューバのアーティスト集団、「El Otro Estudio(もう一つの集団)」のメンバーと交流を深めたこと。7か月間、毎日スタジオを訪れ、アーティストたちと話し、学び合い、展覧会を訪ね歩きました。

「El Otro Estudioが意味するのは、キューバのスラングでピケテ(pikete、仲の良い友達)なんだ。ここに来ると、作品があちらこちらに置かれていて、スタジオ全体がアートのよう。イカれていて(クレージー)で奇跡のよう(マジカル)な場所だった」

アーティストたちはスタジオで、絵画、写真、インスタレーション、映像など独自のスタイルで制作をしていました。場所のバイブ(雰囲気)をインスピレーションにし、あらゆることを「アート作品」として理解することを学び、自由に作品を創り上げていたといいます。

「アートスクールで教育を受けた人も、まるで学んだ経験がないかのように、あらゆる可能性にオープンマインドになって創作をしていた」

スマートフォンにアイデアをスケッチ

そのころ、ディネルソンさんは、キューバで得がたい体験をしていました。

「目の前にミューズ(芸術をつかさどる女神、インスピレーション)が訪れたら、それを最大限にいかして創造しなければいけない。紙、キャンバス、布、木、なんでもいいけれど、アイデアを逃さないようにする。それが7か月間、キューバでしていたことなんだ」

現地で画材が思うように手に入らなかったディネルソンさん。スマートフォンにひたすらスケッチを書き溜め、その数は150作を超えました。

日本に戻り、スマートフォンのスケッチをキャンバスに移すことにしました。自分の手で描く一本一本の線や、物語、素材(テクスチャ―)、色を通じ、「観る人がリアリティを感じてほしかった」とディネルソンさんは説明します。

大きな可能性への扉を開いていく

写真展のタイトル、"From the Other Room"には、「小さな部屋から大きな可能性への扉を開いていく、旅の始まり」という思いをこめました。アーティストとして未来に向けて歩みを進めるディネルソンさんの「今」がつまっている作品でもあります。

作品にはハイチの「強い色」を用いる伝統や、キューバの建物の色からの影響が大きいとのことです。好きなアーティストはジャン=ミシェル・バスキアやパブロ・ピカソ。キューバのアーテストであるウィルフレッド・ラム、チョコ(エドワルド・ロカ)からもインスピレーションを得ているそうです。

展示会に訪れる人には「作品の意味を理解するより、心を開いてアートを感じてもらいたい」。ディネルソンさんはこう話していました。

 

DINELSON ディネルソン(ヨスメル・ディアス・ディネルソン)
1988年キューバ生まれ。ハイチ系キューバ人四世。2015年に来日、17年にハバナに一時帰国し、アーティスト集団「El Otro Studio(もう一つのスタジオ)」に参加。150作以上に及ぶスマートフォンのスケッチをもとに、キャンバスを支持体にしたアクリル、ミクストメディア、コラージュ、マーカー作品「NICE TO MEET YOU ...IS ME」シリーズを制作し、うち3点を本展に展示。

”From the Other Room"
会場:art space "traffic"
東京都目黒区自由が丘1-25-21
TEL:03-3725-8877
会期:2021年8月16日まで
休廊日:水曜日 & 第1・第3火曜日
開場時間:11:00~19:00

Author Profile

斉藤 真紀子
斉藤 真紀子
キューバ倶楽部編集長、ライター。ニューヨークでサルサのレッスンを受けたのをきっかけに、2000年に初めて訪れたキューバが心のふるさとに。
旅をするたびもっと知りたくなるキューバを訪れ、AERA、東洋経済オンライン、TRANSIT、ラティーナ、カモメの本棚、独立メディア塾ほか多数の媒体で記事を執筆。
2015年にキューバの現地の様子や魅力を伝える「キューバ倶楽部」をスタート、旅の情報交換や勉強会、講演会などのイベントも運営。
★キューバのエッセンスを生活に取り入れる日々をnote(https://note.com/makizoo)に綴る。
★Twitter: @cubaclub98 ★ Instagram: @cubaclub98
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