互いに長打を飛ばし合った、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)開幕戦。キューバは宿敵ともいえる、日本との対戦でした。
「バットを振り切る、同じようなプレースタイルの米国に、キューバは勝てるけれど、ち密な試合展開をする日本には勝てないんだよね」 日本が大金星をあげた、4時間近くに及んだ試合を観ながら、キューバの友人の言葉を思い出しました。
その予言(?)があたったのか。たしかに、侍ジャパンの選手たちは、攻守ともに十分なキレがあって、見事なプレーでした。
ドームでもたつく、キューバ選手たち
とはいえ、これがキューバの球場だったら、結果はどうだったのだろう?とも思わずにいられませんでした。
ど素人の私から見ても、今回東京ドームでキューバの選手がフェンス付近の守備でもたついたり、大きく打ち上げられたボールが見えにくいのか「待ち」の姿勢をとっていたり、不思議な間合いがあったように感じたのです。
もちろん、キューバの野球選手たちも、海外遠征には慣れっこかもしれない。しかし、キューバ各都市にある屋外野球場で、ナイトゲームになると停電で試合中断なんてこともよくありました。
判官びいきではないですが、キューバチームが「日本にもっと早く到着して東京ドームで練習を積んでいたら点差が縮まっていたかも」と、思ってしまいました。
キューバ人の野球好きは、現地を訪れると肌で感じることができます。昨年亡くなったフィデル・カストロ前国家評議会議長は、大の野球愛好家で、キューバの国技にしてしまったほど。
私が2008年にキューバを訪ねたとき、もう1年半も前の06年のWBCの決勝試合(日本対キューバ)について、ビシタクシー(自転車タクシー)のこぎ手はじめ、街で会う人たちが、イチローやら、選手の名前をいろいろ挙げて試合を「分析」し、侍ジャパンの日本から来た私に敬意を示してくれたのをなつかしく思い出しました。
野球の熱い議論は公園で
街の風景も、野球大国ならでは。ハバナの街の中心部にある、パルケセントラル(中央公園)の一角には「野球好きが集まる場所」があって、野球シーズンになると、毎日のように数十人の男性たちが集まって熱い議論を戦わせています。
寄っていって耳をすませていたら、熱血ぶりが行き過ぎて、けんかが始まりそうになったので、あわてて離れたことも。
物資が不足しているため、公園で子どもたちが、ガムテープでボールを作り、お手製のバットで野球をしている姿も、かつてはよく見られました。
最近は若者を中心にサッカー人気が高まっており、欧州サッカーのユニフォームを着て街を闊歩する人が目立ったり、子どもたちがボールを蹴って遊ぶ姿をよく見かけるようになりましたが。 そうは言っても、WBCとあらば、現地ではきっとお祭り騒ぎになっているはず。
公園に集まる野球マニアのメンズたちが、対日本戦をどう振り返っているのか。何を話しているのかはおそらくわからないけれど、パルケセントラルへ飛んでいって、議論の様子を見たい衝動にかられています。
Author Profile
- キューバ倶楽部編集長、ライター。ニューヨークでサルサのレッスンを受けたのをきっかけに、2000年に初めて訪れたキューバが心のふるさとに。
旅をするたびもっと知りたくなるキューバを訪れ、AERA、東洋経済オンライン、TRANSIT、ラティーナ、カモメの本棚、独立メディア塾ほか多数の媒体で記事を執筆。
2015年にキューバの現地の様子や魅力を伝える「キューバ倶楽部」をスタート、旅の情報交換や勉強会、講演会などのイベントも運営。
★キューバのエッセンスを生活に取り入れる日々をnote(https://note.com/makizoo)に綴る。
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