職業は「トイレ・アテンダント」~キューバの職業図鑑〜

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移動式トイレの写真

壁の文字は「こっちにおいで」と「こっちにちょうだい」ふたつの意味をかけているのだとか。

キューバの移動式トイレ(写真提供:安達康介

 

キューバを訪れた人たちと、「便座がないトイレは太ももがきたえられる」(「キューバの怖いトイレ事情」)という話をひとしきりしていたら、ひとりの男性がこう切り出しました。

 

「キューバの移動式トイレは、『小』の便器が小さすぎる。あれは何とかならないかな。“的”がコップぐらいの大きさで」

 

何度もキューバに飛び、地方もたくさん訪れているこの男性は、カーニバルなど野外イベントのときや、長距離バスの駅などで、輸送用トラックの荷台を改造したトイレを近年見るようになったそうです。

難易度が高いトイレ

 

とくにインパクトがあったのは、バヤモの長距離バスターミナルで出くわした移動式トイレ。トラックの後方部分から階段を上ると、荷台部分に男子「小」用のトイレが数個、「大」用がひとつ並んでいたのですが…。

 

入り口のところで座っていた男性に1キューバペソを払って入ると、「小」用のトイレが見たこともない小ぶりなサイズ。2リットルペットボトルを半分の大きさにして、キャップ部分を逆さにしたような金属製の便器に排水管がついている。用を足すにも難易度が高い。床が汚れるのか、ホースでこまめに水洗いして清潔さを保っていたそうです。

 

こうした移動式トイレの持ち主や、前回のリポートに出てきたトイレのティッシュ配りのお姉さんたち、実は「政府に認められたれっきとした自営業者」なのだそう。

無銭飲食ならぬ無銭トイレに反省

 

旅行代理店、「トラベルボデギータ」の清野史郎さんによれば、ここ数年で政府が経済改革を進めるなかで認定した、200あまりの自営業リストのなかに「トイレ業」が入っているとのこと。リストをチェックすると、たしかに、レストラン経営、家具修理、スポーツトレイナーなどと並んで、「パブリック・バスルーム・アテンダント」(公衆トイレ付添人)という職業がありました(下記リンク参照)。

 

入り口でチップを集めている「トイレの番頭」さんたちは、てっきり小づかい稼ぎをしていると思っていたら、実は集めたお金で税金をおさめていたのですね。そうとは知らずに、無銭飲食ならぬ、無銭トイレを何度もしてしまい、反省しました。

 

それにしても、自営業リストには「カフェ経営」なんておしゃれな響きなものもあります。トイレ業の人気はいかほどなのでしょうか。「パブリック・バスルーム・アテンダント」という名称はなかなか素敵ですが。ほかにも個人の特技やスキルをいかせそうな職業がたくさんありそうです。

 

とはいえ、社会主義の経済システムでは「自営業」といっても、一攫千金のチャンスはまれ。賃金はたいがい低めで、税金におおかた持っていかれるし、給与水準はみな平等ということになると、引きも切らずに客が来る、トイレ・アテンダントは意外とおいしい職業かもしれません。

 

【キューバ政府認定の自営業リストとは?】(2013年当時)

List of 201 legal occupations for small business entrepreneurs in Cuba

 

今回のメイン写真は以前取材させていただきました、フリーランスフォトグラファーの安達康介さんよりご提供いただきました。

→【インタビュー記事】失われつつある風景を映し出す「Cuba Libre #2」

 

Author Profile

斉藤 真紀子
斉藤 真紀子
日本経済新聞米州総局(ニューヨーク)金融記者、朝日新聞出版「AERA English」編集、週刊誌「AERA」専属記者を経てフリー。共著に「お客様はぬいぐるみ」(飛鳥新社)。趣味はラテン音楽&ダンス、カポエイラ(格闘技)
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